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イタリア料理留学記8 ピーノ&テレサのレッスン

 ナポリで毎日ぷらぷらしていた私ですが、夜は毎日料理レッスンへいきました。場所は、ナポリのやや高級住宅地のヴォメロ地区。ナポリを一望できる丘の上にあり、そこまではフニコラーレ(ケーブルカー)で登っていく。ケーブルカーというと。風光明媚な景色が楽しめる乗り物であるイメージがあるけれど、ナポリのフニコラーレはケーブルカーの地下鉄版。真っ暗で何も見えません!バスだとグネグネ道を登っていかなきゃいけないし、そういう意味ではこのフニコラーレは直線で山の頂上まで一気に上がっていくので便利。

 そんなフニコラーレの終点にある料理教室はこんな感じ。とってもかわいくて、機能性もばっちりのキッチン。
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教えてくれたのはピーノ&テレサ夫妻。
ピーノは建築家(キッチンの設計は彼のもの)でプレゼピオ作家で「料理はボクの第2の情熱だ!」と豪語するナポリを愛するナポリ人だった。(プレゼピオとは、キリスト降誕の様子を、民衆の生活に織り交ぜて表現したジオラマのこと。彼の作品をみせてもらったがとても精巧なものだった。)ナポリ弁を伝承するための学校を設立中で、ピアノもギターも弾けちゃうという、要はマルチ人間。背が低くて白髪でつばをとばしながらぜんまい人形みたいにしゃべる人だった。そして名前がピノって・・・・・。(本名はあるんだけど、日常生活はこれで通しているらしい)
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イタリアのキッチンは作業台の位置が高いので、この背の低いピノが大人数用のデカ鍋を背伸びしながらかき混ぜている姿は白雪姫の7人の小人が炊き出しをしている姿のようで、たまにその不思議な光景をぼーっとみてしまうと時があった。

イタリア料理留学記8 ピーノ&テレサのレッスン_f0023069_0262085.jpg 奥さんのテレサも生粋のナポリ人だったが、とても冷静沈着な人で大声でおしゃべりしたり、いきなり歌いだしたりすることはない人だった(笑。テーブルウェアが大好きなようで毎日のレッスンはお料理にあわせてテーブルクロス、ナプキン、お皿を選んでセッティングしてくれるのが楽しみだった。お皿をいったい何枚持っているのだろうというくらい種類が豊富だった。



さて、こんなご夫妻のレッスンは「生粋のナポリ料理」。変人ピーノは常に「クラッシックな調理法」にやけにこだわる人だったので、昔ながらのナポリ料理を知ることができた。ナポリ料理入門編というか、ナポリ料理の王道レシピが勢ぞろいだったので、今回の私のナポリ滞在の目的は果たされた感があった。
 たまに、とっても奇抜というか、肩透かしな料理もでてきたのだけど、たいていこういうのは変人ピーノが「ナポリ国立図書館の古書から拾ったレシピ」とかなのだ。とりあえず、古いナポリ料理にこだわるので、外す時はひどかった。今の味覚とちょっとちがうのね。

とはいっても、ナポリ料理のルーツは紀元前にまで遡れるので、ちょっと古い文献からひろったレシピどころのはなしではないのがナポリ料理。
古代ギリシャ人がナポリに住んでいたころの料理の名残がいまでものこっていたり、はたまた、フランス・スペイン王朝支配下にあった時代の料理が根付いていたりと、一口にナポリ料理とはいってもさまざまなのだ。料理自体がナポリの年表とでもいおうか。
料理のひとつひとつにエピソードがあるのも興味深い。

 変人ピーノのナポリ熱はたいそうなもので、ちょっとでも「昔ながらじゃない」料理を見かけたり、食べたりした話をすると「こんなのナポリ料理じゃない!!」と、小さい体全身を震わせて
ぴいぴい文句を言ってくるのでたまらなかった。 
多分、彼とマリーサは性格的に正反対なので、変人ピーノがマリーサのちょっと今風アレンジ料理を知ったら、これまた憤慨するのだろうし、逆にマリーサがこの融通が利かないステレオタイプ人間にあったら、表情にこそ出さないけど心の中では「こんな化石みたいなレシピより私の料理のほうがおいしいんだから!」て思うんだろうなあと想像した。

100人いたら100通りのお料理があるものです。けれども、世渡り上手な私はそんなことはいわないで、イタリア人がよろこぶ魔法の言葉を知っていて「ここの料理が一番おいしい!」と言えば、すべて丸く収まるのだった。イタリア人相手ってけっこうたいへんなのよ。

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by buonaforchetta | 2006-11-22 08:51 | 2006年イタリア滞在記
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