イタリア料理留学記5 ナポリの洗礼

プーリアのまぶしい太陽と、温かい人たちのぬくもりを離れて私が向かったのはナポリ。ずっと来たくて来たくて仕方がない土地だった。前回のイタリア料理留学の際にはナポリの近くの街、ソレントに滞在しながらの南イタリア料理を習得したのだったが、今度こそ、ナポリでナポリ料理を学びたいと真剣に考えていた。
 しかしながら、悪名高きナポリ。本格潜入は初めてなので、ナポリ中央駅に降り立ったときは正直全身ガチガチだった。
 最初のステイ先のマリーサの家まではタクシーで行くことにしていたのだけど、まず、タクシーに明るく、フレンドリーにボラれた。タクシー乗り場から正規のタクシーに乗り込もうとしたら、脇からやってきたちょっと小さめのタクシーに「こっちのほうが早いからこっちに乗んな!」とあれよあれよと言う間にスーツケースを詰め込まれてしまった。必死で値段確認をしたところ、まあ、だまされても惜しくない額だったので諦めてこのタクシーを使うことにした。運チャンは「ナポリに何しに来たんだい!?顔が緊張でこわばっているじゃないか!」と親しげに話しかけてくる。何って、アンタに不信感なんだよ・・・とはいえず、「ナポリのタクシーはぼると聞いていたので・・。」とボソッと答える。運チャンはしたり顔で残念そうにうなずきながら「でも、そんなヤツばかりじゃないから。ここはいい街だぜ。」とのたまう。ナポリ弁バリバリの聞き取りづらいイタリア語で運チャンのマリオといろいろ話をしているうちに私の緊張は解けてきた。どうやら、怪しい路地裏で下ろされて金品を巻き上げられることはないようだ。マリオは「それじゃあ、オレがお前のナポリで第一号の友達だ。困ったことがあったらオレを呼べ。」といって彼のタクシーの名刺をくれて、目的のマリーサ家の前まで送り届けてくれた。こんな風に気持ちよく分かれたが、後で知ったのだが、駅からマリーサの家までのタクシー代はやっぱりこんなにかからなかった。5~10ユーロほど高かったんだけど、まあ、ナポリの洗礼を受けたと思って、そしてなにより、うまく私を気持ちよくだましてくれたマリオへの高いチップだと思って、このことはすぐにいい思い出として処理することにした。イタリアにいたらこれくらいの気持ちじゃないといられない。

 そんなこととはつゆ知らず、マリーサの住むマンションの入り口にたつと、すかさず1人のオバアチャンシニョーラが大声で叫びながらよってきた。マリーサは知る人ぞ知る有名人なので、私も、このシニョーラがマリーサだと一発で分かった。
「あなたね、まってたのよぉ。昼からさっそくレッスンしましょ。魚料理にするつもりだから、今から魚屋にいくのよ。近くの魚屋にいくんだけど、そこがけっこういいのよ。アナタももちろんいくでしょ?じゃあ、荷物いったん置いてすぐ行きましょ。あら、名前はナンだっけ?イタリアには何日いるの?今日はナポリの天気はわるいのよぉ・・・・・(以下省略)」
とのべつまくなく話しかけてくる。私は相槌をうつすきも無い。寡黙で温厚なトニーノに慣れてしまったわたしはここでもさっそくナポリの洗礼を受けた気がした。ようしゃべります、ナポリ人は。

f0023069_0564191.jpg荷物を置いて、魚屋に向かう途中でもマリーサの質問攻撃&おしゃべりは止まらない。たまに話に熱が入りすぎて道路の真ん中で立ち止まり、私にいろいろきいてくる。話を聞いてくれるのはうれしいんだけど、車にビーッビーと鳴らされるのはたまらなかった。とりあえず、初対面なので生粋のナポレターノに「車にひかれたら大変だから、道の端によけましょう。」とはいえず、死にませんようにと祈るしかなかった。(翌日からは私も言いたい放題だったけど)
 やっとの思いでついた魚屋や八百屋でたっぷりと買い込みをする。細い路地に生鮮食品が所狭しと売られていて、人もわんさか。下町エネルギーっていうんでしょうか、雑多な感じの生命力を強くかんじて、プーリア平和ぼけは完全にすっ飛んでしまった。


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 そんな魚屋でゲットしてつくったナポリ料理第一号。ナポリっ子が大好きなメッザ・ジータというパスタに絡めたお魚ちゃん。ぎゅっと味が凝縮されてて、すごくウマイ!ナポリに来たーってまたまた思わせてくれる料理。
 外はパトカーがサイレン鳴らして走って、ごみ処理場のストライキのせいで街中ゴミ袋があふれかえっているけど、私は絶対、この街が好きに違いないとこの一皿で確信してしまった。 





 
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ストライキ続きでゴミ集積所はこんな感じ。
ここまでなってくると、どこまでこの山が高くなるのか楽しみだ、と開き直りの境地にたっしてしまう。周期でいうと、ゴミが道をふさぐ寸前で回収にくるよう。
 私にいわせれば、ストライキとはいうけれど、かなり確信犯的にごみ回収の回数を調整しているようにしか思われず。
 イタリアのごみ収集は深夜にやってくる。運悪く、ナポリで滞在した2箇所の私の部屋はどちらもゴミ置き場が窓からみえるところだったので深夜のゴミ回収のやかましさで起こされることが多々あった。毎晩おこされたらたまんないけど、ストライキのおかげで週1くらいだから、正直助かったなと思う。

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by buonaforchetta | 2006-11-15 00:58 | 2006年イタリア滞在記
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