トニーノにレッスンの合間に一度だけ、メルカート(市)に連れて行ってもらった。 というのも、プーリアの伝統手打ちパスタ「マッケローニ」を作る道具を手に入れたかったから。 MAKIさん宅に滞在中に教わったパスタなのだけど、これを作る道具は、四角い断面の金属の棒が必要だそうな。細長くきった生地を棒に巻きつけてごろごろ転がすとこのパスタになるっていうわけ。 けっこうこの作業が大好きだし、食感もおもしろい。 町の道具やさんにはおいていないらしく、週1回やってくるメルカートに行けばあるかもしれないという話。はたまた別の情報だと、屋台でうられるのではなく、ジプシーのような女の人が手かごに入れて「いらんかね~」と売って回っているのだそう。 プーリアの伝統パスタを作る道具であるのにそこまでレアな遭遇率なのかといぶかしくも思われる。 「昔は、傘の骨を抜き取ってつくったもんだけどねえ・・・・」というMAKIさんのマンマ。 マンマ・・・・、それはちょっとワイルドすぎやしませんか。 こちらのマンマ、けっこうワイルドでパスタを伸ばす長い麺棒がないときには「ほうきの柄を切り取ってやすりで磨いて使いなさい!」って言われました(笑。 昔の人はなんでもがんばって工夫して作っていたのね。 だけど、私はお道具がほしいの。傘の骨はイヤーーーー。これはなんとしてでも手に入れなければ。 それはともかくとして、プーリアにいるうちにうまいことメルカートにいかなければ・・・ということでトニーノに車で一時間くらいの町で開かれているメルカートに連れて行ってもらった。 メルカートの開かれている広場に着くとトニーノは「いいか、買い物には冷静な心が必要なんだ・・・・」と私にぼそっとつぶやいた。 もしかして、それって去年のこと?昨年は、トニーノに陶器の町、グロッタリエに連れて行ってもらい、私の最強の相棒となってくれたKさんと数時間に及ぶ、グロッタリエ買い物ツアーを繰り広げ、それに付き合わされたトニーノはしなびてぐったりしてしまったのだった。 「大丈夫!私、買い物早いから!安心して」 というものの、憂鬱そうなトニーノの横顔。 お店のすくないトニーノ宅周辺を抜け出し、私の買い物欲が果たされそうだというのに、なんてこというのか、トニーノめ! 一緒にメルカート会場に入ると、トニーノはキッチン用品のバンカレッラ(屋台)に的を絞って近づいてゆき、店頭の品の物色もせずに、店主に「マッケローニの棒はあるか」と尋ねる。 案の定おいていないとの回答。すかさず、次の店に移動するトニーノ。 ああ、少し物色させてよ・・・。 2件目の店で売ってそうな場所をトニーノが聞き出してくれたのでそこのバンカレッラへ向かう。 途中、洋服だの雑貨だのお店に目移りする私。 夏のイタリアに来たはずなのに、「マエストラーレ」という北から吹いてくる冷たい強い風がプーリアを吹き荒れており、夏仕度しかしていない私は厚手の長袖の一枚も手に入れたいところ。 「まずは棒を買ってから、引き返すときにみたらいいじゃないか」 とトニーノに言われ、目的のバンカレッラに向かう。 市のほんとに一番隅っこ、10分以上歩いていった先に店開きをしていたのは、なんと金物屋さん。キッチン用品というよりは日曜大工用品の店のように思われる。 まず、私ひとりだったら素通りしていたに違いない、うん。 「トニーノが多分あるよ」といって店の親父に聞くと「ほら、足元にあるのがそれだ」と親父が言う。目線を下にやるとおお、太目の四角い棒、やけにつるつるで新品丸出しだけれど、まさしくこれです!!レッスンでも使えるように5本ほど購入!! お値段も一本1ユーロとけっこうお買い得。うわさでは1個5ユーロするのだと聞いてびびっていたのだ。いやあ、しかしトニーノがいてくれなかったらこの棒、ついには見つけられなかったかもしれないと思い大感謝。 だけど、男と買い物にくるもんじゃないねぇ、とそのあとつくづく思わされる。目的を果たすと着た道をきびすをかえして帰り始めるのだ! おい、こら、待て!!なんで男というのは古今東西、買い物につきあってくれないのか。 えっ、ほかのも見たいわけ、というのが顔に書いてあるちょっと困惑気味のトニーノをなんとか1軒は引き止めて、テーブルクロスの類を買い込んだ。もちろん「きゃあ、これなんだかかわいくな~い??買っちゃおうかな、どうしよ~う」「え~、買っちゃえ買っちゃえ!私もおそろいで買おうかな~」と言う乙女の会話は皆無。 「これどお?」ときくと「うん、いいんじゃない。」 このせりふ、えなりくんと買い物にいくときの会話そのもの。ふう、男って・・・。 というわけで、当初目的の品はゲットしたものの、後ろ髪を惹かれる思いでメルカートを後にしたので、買い物欲は不完全燃焼。 去年引きずり回したのがそんなにトラウマになっているのか、トニーノ??? 次はボローニャの土曜市にかけるしかない!! メルカートに店開きしている、食品、洋服、日曜雑貨、大道具、小道具、布、などの店は、毎日違う町で開かれるメルカートからメルカートを移動している。 土曜日ならオストゥーニ、水曜日は私が来たここのメルカート、明日はその隣町・・・・というように。街中にたいした商店もない田舎町で不便もなく生活していけるのは毎週やってきてくれるメルカートのおかげといえよう。雨がふると中止されてしまうらしいけど。 しかし、歴史の教科書で「市が立つ」とかいう表現がでてきたものの、市が立つということがどういうことであるのか実感を持てずに覚えこんだ私にとってはこれがまさしく「市が立つ」ということなのだなと思わされる。 空き地だの公園だの普段何もないスペースにぎっしりとありとあらゆるものを売る店が突如として現れるのだから、日本の昔の人も、そして今のイタリア人にとっても、私にとっても「市が立つ」というのは大きな楽しみであるにちがいない。しかし、それは「男」というカテゴリーを抜いてのことだけれども!!
by buonaforchetta
| 2007-09-26 14:12
| 2007年イタリア滞在記
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