イタリア料理留学記6 マリーサのレッスン

 
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ナポリで始まったガチンコ生活。美味しいお魚のランチを食べて一休みしたら、夕方からはケータリングのお手伝いが待っていた。なんでも、翌日に30人分のランチのケータリングをこなさなければならないらしい。その、ケータリングのメニューに私が前もってリクエストしておいたナポリ料理の最高峰「サルトゥ・ディ・リーゾ」が盛り込まれているというのでガゼンやる気が出てくる。この料理は具を5種類ほどつめたリゾットで作るケーキといえばわかりやすいかな、とりあえず、ふつうにしていたらまず、作らない料理。手間もヒマもお金もかかる料理なので、このケータリングが無かったら作ってもらえなかったかもしれないのでラッキーだった。

 前日から仕込みをはじめて、翌日も朝から大忙し。なのに、マリーサにはひっきりなしに電話がかかってくるので(しかも長電話)、単純作業系は私がひとりでだいぶこなしたと思う。じゃがいもの皮むき2キロ分とか。ケータリング用のサルトゥのほかに、私用の小さいサルトゥもつくって、それから30人分のパスタ料理に、ナポリ風の揚げ物をフライヤーで延々1時間以上揚げ続け・・・・。(このマリーサ秘伝の揚げ衣がほんとにウマイ!)

 おかげで、ケータリングは好評のうちに終わり、お客さんにも「ブラバ!(すごいぞ)」と誉めてもらった。一息ついて、マリーサ家のリビングでくつろいでいると玄関の呼び鈴が鳴った。私がでると、近所のバールのお兄ちゃんがカッフェの出前を持ってきている。「頼んでないよ」というと
「○○さんからです。お代はいりません」とのこと。ケータリングのお礼に、依頼主がおいしいカッフェを届けてくれたのだった。憎いことするじゃないの!!この気のきいた取り計らいに私はすっかり御満悦だった。

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 嵐のようなケータリングは滞在中、1回だけだったので、あとはのんびりレッスン。時には3時間かけて魚屋に買い物に出かけたりする。ここですごいなとおもうのが、マリーサの目利き。ナポリに山ほどある魚屋をそれぞれ使い分けていて、一目見てどれがウマイか見分けて買い物をする。魚を数種類買うにしても1軒で済ませることはしないで、数軒をはしごして買い物していくのだ。「おいしくないものなんて食べたくないじゃない。お金かかるけど」というのがマリーサの口ぐせだった。一度は、カジキマグロのオーブン焼きを作るのに買い物に出かけたことがあったが、魚屋がカジキマグロを薄く切れないというのを理由に買い物をやめてしまったことがあった。「もっとウデのいい魚屋で切ってもらって作りましょう」といって、そのメニューは延期になってしまった。後日、とってもうすくきってくれる魚屋に出会えたので私はその料理を口にすることができたのだけれど、ほんと、こういうことの一つ一つにこだわりが見え隠れしていて、マリーサってすごいなあと思う。

 彼女は日本人向けのイタリア料理学校のナポリ料理の担当でこの道のベテラン先生なので、その先生に一日中「料理教えて~!」とくっついて回れたのはほんとに幸せだった。
「ナポリの料理教室付きホームステイ」を申し込んだ時点では、まさか、そのステイ先がこのマリーサだとは思わなかったので、分かった時はそれはそれはうれしくて仕方なかった。

 先ほどから魚料理ばかり誉めていたけど、他の肉・パスタなんかも断然美味しかった。肉料理はパンチが効いていたし、野菜でつくるパスタは優しい味がして、それぞれメリハリがあってまず、食べることにおいては絶対裏切られることは無かった。マリーサの家でのステイが終わってからも、ナポリに残留していた私は、晩ごはんを狙って時たま遊びにいったりして、ちょこちょことマリーサにレシピを聞き出したりしていた。
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 マリーサの豪華料理をねらうならなんといっても日曜日。近所に住む、マリーサの長女のアマリア夫婦が訪ねてくるから、ウデによりをかけてお料理するのだ。午前中は魚屋に買出しにいって、たっぷりのランチを作る。水牛のモッツァレラチーズで有名なガゼルタ直送のでっかいモッツァレラが出てきたり、愛する家族が集うお食事はなんともリッチ。ちょうど、アマリアのお誕生日の時期に日曜日があたったので、ある日はお誕生日パーティーを開いた。
「アウグーリー、アー、テー♪アウグーリー、アー、テー♪タンテ・アウグーリ・ア・アマリア♪アウグーリー、アーーー、テーーーー」とハッピー・バースーデー・トゥー・ユーの曲にあわせてみんなで大合唱。しかもエンドレス(^^;)ケーキのろうそく全部溶けちゃうよ~というまで、えんえん歌ったり写真をとったりそれはもうにぎやか!!ぜひ、イタリアで誕生日を迎えてみたいものだと思ってしまう。しかしながら、カロリーが気になるのは古今東西どこもいっしょ。やっとのことでローソクをけしたケーキはバターと砂糖が少なめのフルーツタルトでした(^^;)

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 マリーサの私の評価は「よく働く」だった。お料理が知りたいばかりに常にキッチンに張り込み、あれやこれやとお手伝いをしていたので当然だった。それに、レッスン中かかってくる電話のためにマリーサがキッチン不在になったときには、ひとりで延々と手打ちパスタを生産しつづけていたりと、そりゃあよく働きました。マリーサの長電話中に私が1人で仕上げた生パスタ、どうよ。やっとこ電話が終わってもどってきたマリーサは決まって大絶賛。「あなたってなんて素敵な子なの!こんなよく働く日本人はじめてよ!」
 お調子者のナポレターノにのせられるのはかなりおてのものになってしまった。しかし、一番嬉しかったのは「manaは太陽みたいに元気で明るくて、ほんとにナポリの女みたいね!」といわれたことだった。ナポリ人にとって太陽は一番といっていいほど大事なもの。その太陽みたい、と言われるのは最上級の誉め言葉だと私は受け取っているのだけど。たしかに、ナポリはイタリアのどの街よりも、私が一番素直で自然にいられる場所だなと思う。私、ナポリあっているわ。

 それから、マリーサはほんとに私のお母さんのように、なれないイタリアで結婚式をする私のためにいろいろ気を使ってくれた。このお話はまた、結婚式の記事に書こうとおもうのだけど、マリーサがいてくれたから私のナポリ生活も楽しく充実したものになり、結婚式も思い出深いものになったんだと思って感謝している。

 そそっかしくて、ナポリ人にも一目置かれるちょっとクレイジーで心優しいナポリのシニョーラ。「夏は暑くて料理したくないから、それ以外にまたいらっしゃいよ。」としゃあしゃあと言ってしまうマリーサに再訪の約束をした。
 トニーノにマリーサ、イタリアにまた会いたい人がいっぱい出来てしまって、次回の私のイタリア滞在はきゅうきゅうになっちゃうな、と今から心配してしまう自分がおかしくて笑ってしまった。

 
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by buonaforchetta | 2006-11-16 01:20 | 2006年イタリア滞在記
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