2009年冬 イタリア滞在記3 北カラブリア料理のあらまし

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到着日から始まった料理レッスンは、私の「郷土料理を」のリクエストをもとに展開。
出来上がった料理はブータンのくだりがやや的中気味の割とシンプルな料理たち。
それにマンマの調理法は廃棄率が極めて少ない素材をできる限り使うまさしく主婦の鏡。

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登場する食材も、オリーブ、アンチョビ、ペペロンチーノ、パン粉など保存のきくものが圧倒的に多い。
蛋白源はというと自家製のペペロンチーノ入りのサラミに、バカラ(塩漬けのタラ)もしくはストッコ(干しタラ)などこちらも保存のきく食材が中心。

色合いも割と地味子。ナポリあたりの料理は割と色とりどり、目にも鮮やかな料理がお目見えするのだけれども、こっちの料理はなんというか「茶色系」。
お弁当箱開けたら、茶色い系しか入っていない中学校時代の悲しい思いで。隣の席の子はカラフルお弁当なのに。まあ、そんな感想の見た目のものが多い。


レッスンの合間(というか、後述するがレッスン以外はヒマ)にマンマから借りた料理の歴史本をかなり読み込んだところ、この実に素朴なカラブリアの料理たちが理解できるのだった。

 今回私が訪れたのはイタリアのつま先の州、カラブリア。
といっても、滞在先のカストロヴィッラリという街はナポリがあるカンパニア州、バジリカータ州とカラブリアの3州が隣接する州境。
特にこのカストロヴィッラリというのは、ポッリーノ国立公園というこの3州にまたがっている山のふもとにあり、食文化圏もこのポッリーノ国立公園一帯に属する。ということは、カラブリア、カンパニア、バジリカータの融合体のお料理が並ぶというわけ。



まず、驚くのがこんなごくごく小さい無名の田舎町でエリアも限定的であるにもかかわらず、郷土料理が確立されており、そのエリアの食文化の歴史・ルーツを記した本が出版されているということ。
カラブリアなら「カラブリア料理」とひとくくりにしたくなるものの、10キロ先の町に行くと異なった食文化があるということが珍しくないイタリアの事、おそらく、カラブリア州の海に囲まれた最南端にいくとカストロヴィッラリとは(共通する料理はあるものの)、異なったお料理が並ぶのだろう。
というわけで、以下に記すのは「北」カラブリア料理のあらまし。



その歴史書によれば、この山間部のカラブリア料理の特徴というのは

その昔、生産性の低い土地での農業、羊飼いがこの地域の主な産業であり、また冬が厳しいことから、そこから得られた農産物などを
■塩漬け、酢漬け、オイル漬けの保存食文化が発達し
■厳しい冬を乗り越えるために、必要最低限の食材を使いこなしての料理
というのが中心になっており、それを彩っていたのが
■特産のオリーブオイルとペペロンチーノ
ということになる、らしい。

クリスマスや復活祭といった特別な時でも、、ふんだんに材料を使って料理をするということは少なく、「手に入る食材を組み合わせて料理をする」という習慣があったらしい。



ということは、ここでは冬を越せるかどうかというのが死活問題で料理がおいしいとか、見た目がリッチ~とか能天気なことを言っている場合ではないという壮絶な世界。

マンマが口癖のように「戦争のときには食べ物がなくてね~」と繰り返し言い、材料を徹底的に節約して使う姿。(そのたびにフランチェンが「マンマは戦後生まれじゃないか~!」と突っ込む。が、きっとマンマのマンマにそういう話を聞かされて育ったんだろうね。何せこのマンマ、ブロッコリーの葉っぱ一枚捨てずにお料理に使うのだから。)
それに、先日通ってきた荒れた岩肌に斜面の雪。

そんなマンマの在り方とあの景色を思えば、まさしく文献のとおりなんだと思う。
 
「パン粉とアンチョビのパスタ」という茶色系の地味な料理があり、「これぞまさに給料日前のパスタ。節約料理ね~」と味わい深いアンチョビのしみ込んだパン粉をもさもさ食べならがそんなことを考えたのだけれども、
ところが文献によるとこのパスタというのは「クリスマスイブの晩餐に出される”ごちそう”の一つ」ということだった。
ひぃ、スミマセン!!

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海から車で小一時間離れたこの土地、大昔はきっと鮮魚も手に入りづらく、アンチョビのオイル漬けがきっと貴重な海の幸だったのだろう。つつましやかな気持ちでクリスマスの前夜をこの料理を大切にいただいてきた姿が思い浮かばれるのだった。

シンプルな料理に刺激を与えているのがやはりペペロンチーノ。冬の食べ物が乏しい時期には、体の底から温めてくれるこれが欠かせず、そしてまた、色が乏しいこの時期に、夏の名残を残した赤い一片がその食卓を彩っていたのだろう。
ペペロンチーノは、活力源でもあり、そして人々の小さな希望の種。


イタリアをほうぼうまわって家庭料理、郷土料理を食べ歩いてきた経験から言ってここで見るお料理は全体を通しても一番シンプルな部類に入ると思う。
滞在中であったこの一帯の人々に「ウチの郷土料理を習っているんだって?何を教えてもらったの?」と聞かれることがたびたびあり、マンマに習った料理名を羅列したところ、ほとんどの人が
「それはずいぶんご馳走ばかりを習ったんだね!」と口をそろえて言うのだった。
食べものが豊かになった時代でも、このつつましやかな料理がここの人々の精神の根底にあるのだということがこの反応からもうかがわれる。
(もちろん、まちにいけば、肉・魚何でも買えるし、みんなそれを食べてはいるのだけども)


そんなわけで、こんなどっか~んとキレイな料理が出されると



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「いいんですか?なんか今日、リッチめにゅーじゃないですか?」
とつい思っちゃう(笑)

3月のレッスンのメニューでもある
「バカラの煮込み」は、ブドウやオリーブの収穫といった年間で一番労働力を要する時期にだけ出されたごちそうだそうな。
つまり、カストロヴィッラリの一番のハイカロリー料理(笑)??
もちろん、おいしゅうございましたよ。


こんな"ごちそう"をいただいながらも、ど田舎滞在でする事がない私。
オリーブでもブドウでも摘み取りしてナポリから徐々に蓄積されつつあるカロリーを消費をしたいものの、
いったいどこでどうすれば消費できるんでしょう????
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by buonaforchetta | 2009-02-23 18:09 | 2009年冬 イタリア滞在記
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